カタツムリの左右性進化から一遺伝子種分化の謎に迫る
山道 真人 (コーネル大学)
 進化生物学では、一つの遺伝子によって生殖不和合性が引き起こされる種分化(一遺伝子種分化)は起こりにくいとされてきた。しかし、カタツムリでは殻の巻き方向が一遺伝子座二対立遺伝子で決まり、巻き方向の異なる個体は交配が難しいため、左右性が逆転することによって一遺伝子種分化が起きたと言われている。カタツムリの場合、遺伝的浮動と遅滞遺伝(親の遺伝子型が子の表現型を決める遺伝様式)が一遺伝子種分化を促進すると考えられてきたが、近年になって、右巻きのカタツムリに特化した捕食者(セダカヘビ)が種分化に果たす役割が注目されてきた。 そこで、これまでの議論を整理し、右巻きに偏った捕食という種間相互作用が種分化に与える影響を理解するため、数理モデルによる解析を行った。その結果、捕食がない状況では遅滞遺伝と劣性対立遺伝子が、捕食がある状況では優性対立遺伝子が一遺伝子種分化を促進することがわかった。今後の課題として、空間構造が一遺伝子種分化に与える影響についても議論したい。
  1. Yamamichi M, Sasaki A (2013) Single-gene speciation with pleiotropy: Effects of allele dominance, population size, and delayed inheritance. Evolution 67(7): 2011-2023.
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last update: 2014-3-3, open: 2014-2-24
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