巻貝における貝殻の形態進化
~Evo-DevoからEco-Evo-Devoへ~
*清水啓介,遠藤一佳 (東京大・院理・地球惑星)
巻貝において多様な貝殻の形態進化は興味深い生命現象のひとつである. 貝殻の形態は種間での違いだけではなく,同種内の集団間でも環境の違いにより貝殻形態が可塑的に変化することが知られている. このような貝殻の形態の違いが如何にして起こるのかを理解する上で貝殻形成および貝殻成長の発生システムの理解は必要不可欠である。 しかし,貝殻形成の遺伝的基盤の理解はほとんどされておらず,数理モデルによる理論形態学的な理解だけにとどまっている。 本研究で着目する遺伝子dppは笠型の貝殻を持つセイヨウカサガイ(Patella vulgata)では 貝殻の初期形成を担う貝殻腺の全体で発現しているのに対し, 右巻きに螺旋成長するタケノコモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)では貝殻腺の右側でのみ発現することが知られているが, 後期成長においてdppがどのような役割を果たしているかは不明であった. そこで本研究では,貝殻の後期成長を担う外套膜に着目し, dppとDppシグナルによってリン酸化されるリン酸化SMAD1/5/8(pSMAD1/5/8)の発現解析に加えて, Dppのシグナル阻害剤による機能阻害実験を行なった. 本講演では,これらの実験結果から貝殻形態がどのようなメカニズムで進化しうるのかを議論するだけでなく, 今後「貝殻形態のEco-Evo-Devo」を進める上でどのようなアプローチが可能であるかを議論したい.
  1. Shimizu, K., Sarashina,I., Kagi,H., Endo,K.(2011). Possible functions of dpp in gastropod shell formation and shell coiling. Dev. Genes Evol. 221,59.68.
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last update: 2013-2-21, open: 2013-2-21
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