重金属の毒性を予測するモデル 〜1つだけでも、いくつあっても〜

加茂 将史
(産業技術総合研究所・安全科学研究部門)

08/05/15, 10:30 (理学部3号館6階数理生物学セミナー室)


 化学物質の生態リスク評価を行うには、化学物質の生物への毒性を知る必要がある。重金属の毒性は、水の硬度やpH、温度、溶存有機物の量等、水質の違いにより大きく変化することが知られている。すべての水質で毒性試験を行うことが理想的であるが、そんなことは不可能なので、毒性を予測するモデルが必要となる。重金属の毒性を予測するモデルとしてBiotic Ligand Modelがあるが、このモデルは単一の金属の毒性しか予測できない。重金属汚染地域は単一の金属のみに汚染されていることはまれで、複数の重金属による複合汚染がほとんどでる。そのような現実的な環境に対し環境保全や対策を行うには、重金属の毒性の複合影響を知る必要がある。本研究ではBLMを改造し、重金属が複数存在しても毒性を予測するモデルを開発した。
  重金属はリガンドと呼ばれる負に荷電したイオンチャンネルを通して体内に取り込まれると考えられている。このイオンチャンネルはカルシウムの吸収にも使われており、重金属がカルシウムの吸収を阻害することで死亡が起きると考えられている。BLMはリガンドに吸着した重金属の量から死亡率を推定するが、本研究ではリガンドから取り込まれるカルシウムの量から死亡を推定することを試みた。吸収されるカルシウムの量は重金属がいくつ存在しても計算可能であり、このことにより、重金属複合暴露の毒性の予測が可能となる。モデルの妥当性について検討する。


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