有限集団ゲームとしてとらえた樹木繁殖パターンの進化

立木 佑弥
(九大・理・生物)

08/05/20, 13:30 (理学部3号館6階数理生物学セミナー室)


 森林には豊凶があることが知られている。豊作年には林内の樹木が一斉に開花•結実し森林内には多数の種子が生産される。逆に凶作年にはほとんど開花が見られない。豊凶パターンは3年周期などと明確に決まっている訳ではなく、数年に一度一斉開花が観察される。豊凶が引き起こされるメカニズムは単に環境の揺らぎの影響というわけではなく、樹木の資源貯蔵と消費のサイクルが引き起こしているものと考えられる。ではなぜ樹木は安定して毎年繁殖するのではなく、間欠的な繁殖を行うように進化したのだろうか。
  豊凶のメカニズムを表現したモデルとしてResource Budget Modelが知られている。このモデルでは、森林内の各樹木は光合成によって資源を蓄積し、繁殖によって蓄積資源を消費する。繁殖時の資源消費量の大小によって繁殖パターンが毎年繁殖から、間欠的な繁殖へと移行する。本研究ではモデルを用いてアダプティブダイナミクスの枠組みで開花様式の進化を考察した。
  森林の個体群動態では、若い樹木の定着には必ず大人の個体の枯死を伴う。これは成熟個体が樹冠を形成している間は幼少個体が成長を妨げられるため、幼少個体が成長するためには成熟個体が枯れて光が差し込むギャップが必要となるからである。
  以上のような固着性生物個体群の動態の特徴や、RBMで各個体の蓄積資源量を記述するという制約から、本研究は有限集団個体ベースモデルで進化を議論するものとなる。


Back: Japanese / English