個体差がもたらす被食者-捕食者の持続性について


中道康文
(Department of Biology, Kyushu University)

10/02/16, 13:30 - 14:30 at Room 3631 (6th floor of building 3 of the Faculty of Sciences)


生態系における生物個体群の持続性のメカニズムを明らかにすることは、生態学における主要なテーマの1つである。特に、被食-捕食の関係は、生態系の根幹をなす関係であり、この関係がどのようなメカニズムで維持されているのかを明らかにすることは、生物個体群が持続するメガニズムを明らかにする上で非常に重要である。
過去の研究により、被食者の個体群の群集に何らかの構造(生息地の違いなど)があり、捕食からの生存率が異なる集団が同時に存在することが、食うものと食われるものの共存に重要であることが分かった。このような研究は主に数式を用いた理論的研究を中心に進められてきたが、このとき集団内に存在する個体間の性質の差(個体の多様性)はないものと仮定されてきた。しかし、実際の生物はたとえ同種であったとしても、個体毎に性質が少しずつ異なっている。被食者に個体の多様性があり、その性質が捕食からの生存率に影響を与える場合、その影響は無視できない。
そこで本研究では、個体の多様性のひとつであり、昆虫などで普遍的に見られる個体間の成長速度の差に注目した。個体差が被食者ー捕食者系の持続性に与える影響について、室内実験と個体ベースモデルを用いた解析結果を紹介する。


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