アズキノメイガにおける性フェロモン生産とフェロモン反応性の遺伝学

高梨 琢磨(東大院・農・応用昆虫)

01/04/17, 13:30- at Room No.3631 (6th floor of the 3rd building of the Faculty of Sciences)



 アズキノメイガのメス性フェロモンの組成(11-テトラデセニルアセテートのE体・Z 体)には大きな変異があり、3タイプ(Z、I、Eタイプ)におおまかに分けられる。Zタ イプ(E体の成分比率0-20%)とEタイプ(95-100%)の交雑より得たF1は、Iタイプ(35-85% )となること、そして、戻し交配およびF2世代の解析結果から、フェロモンの変異は 常染色体の1遺伝子座2対立遺伝子によって支配されていることが明らかになった。野 外において、フェロモンの変異は集団内で同所的な多型として存在し、かつ、Z、I、 Eタイプの相対頻度は集団間で大きく異なっていた。 一方、フェロモンに対するオスの反応性にも変異があり、Zタイプ系統のオスはZタイ プの合成フェロモンに、Eタイプ系統のオスはEタイプの合成フェロモンに、それぞれ 強く反応することが明らかになった。両系統を交雑して得たF1オスは、正逆交雑とも にIタイプの合成フェロモンに強く反応し、オスの反応性の変異がメスのフェロモン の変異に対応していることが示された。戻し交配とF2世代の結果から、オスの反応性 の変異は性染色体上の遺伝子座の支配を強く受けていると考えられた。オスの反応性 変異とメスのフェロモン変異に基づく同類交配の程度は、野外集団によって異なって いた。オスの反応性変異とメスのフェロモン変異の遺伝的基盤をもとにした集団遺伝 モデルより、考察をおこなう。