協和音・不協和音の区別は
如何にして与えられるか
加茂 将史(九大・理・生物・数理生物)
5月26 日 (火) 午後1時30分より
九大理学部3号館 6階 3631
数理生物学セミナー室

二つ以上の音の組み合わせは和音と呼ばれる。ヒトでは二音の組み合わせを良い音(協和音)と不快な音(不協和音)とに区別している。この区別はいかにして与えられるのかを調べた。
 基音の周波数の整数倍の周波数を持つ部分音は倍音と呼ばれる。声や弦楽器を音源として発せられた音にはこの部分音が含まれる事が多い。

 聴覚神経系をニューラルネットとしてモデル化し、それを一つの動物と見立てさまざまな音を聞かせた。協和音・不協和音の区別を与えると考えられる3つの仮説は、

 (1)区別はまったく任意であり、学習によって獲得される(学習仮説)。
 (2)倍音を含む音(例えば声)と含まない音(ノイズ等)を区別する必要性がある場合、倍音列の中に含まれる音程に対し、副次的に好みが生じる(副次仮説)。
 (3)二つの異なる音を聞き比べたとき、倍音列の中に同じ音が含まれていると、似た音として認識され、協和音として区別される(般化仮説)。

 結果は、仮説(2)の下で訓練を行ったネットワークは協和音に対して選好性を示さなかったが、仮説(3)のもとで訓練を行ったネットワークには、協和音を好み、不協和音を忌避するという傾向が生じた。このことは、倍音を含む音を多く聞くと自動的に、協和音・不協和音の区別が生じる事を示唆する。