ホンソメワケベラの性転換時の繁殖行動
中嶋康裕(宮城大学・看護学部))
11月24日 (火) 午前10:00

動物の性転換に関する数理モデルは、サイズ・アドバンテージモデルを中心によく整 備されてきている。しかし、性転換時の行動様式の変化や、それに伴うコストについ ての実践的な研究はほとんど進んでいない。そこで、掃除魚としてよく知られるホン ソメワケベラを対象として、性転換時の繁殖行動の可塑性について沖縄県瀬底島で調 査を行った。
 一夫多妻のホンソメワケベラでは、♂が死亡すると♀のなかで最大の個体(1位♀ )が♂に性転換することが知られている。1位♀が産卵した直後に♂を除去すると、 1位♀はすみやかに♂の求愛行動を開始し、下位♀に産卵させた。産卵予定時刻の1 ~2時間前に♂を除去しても、熟卵を持っているにもかかわらず1位♀が♂の求愛行 動を始め、下位♀に産卵させた。その直後に♂を戻すと、1位♀はすみやかに♀の行 動に戻り産卵した。すなわち、1位♀は、その生殖腺にはまったく拘束されず、相手 次第で性行動を変える能力をもっていることがわかった。
 また、別の実験によって、産卵行動は雄のディスプレイによって誘発されるのでは なく、雌の自発的な産卵リズムに主導されていることがわかった。