ホスト・パラサイト共進化とメタ個体群
佐々木顕(九大・理・生物)
12月1日 (火) 午後1:30

遺伝子対遺伝子(gene-for-gene)モデルは、植物(の抵抗性)と病原菌(の病原性) 共進化の基本モデルである。しかし、これは常に遺伝的多様性消失へ向かう発散振動 (ヘテロクリニックサイクル)をもたらし、抵抗性や病原性に関する遺伝的多様性を 説明できないと言われてきた。また遺伝的多様性がホストパラサイト共進化で維持さ れないと、「病原体への対抗手段として性が進化した」という赤の女王仮説も成立し ない。

ここでは、大域的および局所的移住をともなうメタ個体群構造を導入することによる gene-for-geneモデル、およびHAMAXモデル(Hamilton et al. 1990)の興味深い挙動 (ペースメーカー、スパイラル、ターゲットパタン、領域分割など)について報告し 、あわせて、性の進化の赤の女王仮説について、また有性と無性の安定共存、地理的 単為生殖、無性クローンの遺伝的多様性と地理的分布などについて議論する。[W.D. Hamilton (Department of Zoology, Oxford University)との共同研究]