セタシジミの資源回復計画
松田裕之(東大・海洋研)
2月4日 (木)  午前10:00-12:00

本研究は西森克浩氏(滋賀水試)との共同研究である。  琵琶湖特産種であるセタシジミCorbicula sandaiは、1950年代後半には6000トンの 漁獲量があったが、近年は漁獲量が激減し、97年には120トンまで落ち込んだ。網目 を大きくすることで漁獲開始殻長を引き上げ、資源と漁獲量の回復に及ぼす効果と 将来展望を理論的に予測する。
 近年の調査漁獲から自然死亡率と成長曲線を推定し、齢構成模型でなく、体長組 成模型により体長ごとの繁殖価を推定する。体長別等産卵量曲線及び(割引率を考 慮した)等漁獲量曲線を描き、現在の乱獲状況を評価する。さらに、近年7%ずつ資 源が減っていると仮定し、漁獲開始殻長を15mmから20mmに引き上げた場合に、今 後資源と漁獲量がどのように回復していくかを計算機実験により予測する。
 現在の漁獲圧は、加入乱獲であるだけでなく、成長乱獲状態である。網目を大きく した年には漁獲量は3割ほど落ち込むが、翌年から数年間は管理直前の年とほぼ 同じ漁獲量が得られ、その後資源回復とともに漁獲量も回復し始めることが予想され る。
この回復の時間遅れは人口学的慣性と言われ、齢構成の歪みによる。人口学的慣 性は世代時間が長く、減少率の激しい資源ほど長引く。毎年平均7%の勢いで減り 続けている現状を考えれば、管理計画の早期実施が望まれる。

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