DNAコンピューティングにおける
ハイブリダイゼーションプロセスの検証

山下 仁(九大・理・生物・数理生物)

5月18日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階 3631 数理生物学セミナー室


 
 DNAコンピューティングとは、DNAの分子レベルの化学反応を利用した計算機構であ
り、1994 年にScience 誌に L. Adleman の論文[1]が掲載されたのをきっかけに、世
界中で研究され始めた。
Adleman はこの仕事において、DNA分子を用いて有向ハミルトン経路問題を解くアル
ゴリズムを提案し、実際に実験室で7頂点の問題を解くことに成功している。この分
野の研究は未だ産声をあげたばかりであり、実用化に至るまでにはほど遠い状態では
あるが、分子化学反応の持つ超並列性、省エネルギー性、生体高分子による高い情報
密度といった点で注目を集めている。
 DNAコンピューティングでは、DNA分子どうしをハイブリダイゼーションさせ、解と
しての目的DNAを生成していく。このプロセスをハイブリダイゼーションプロセスと
呼んでいる。本セミナーでは、有向ハミルトン経路問題を題材にとり、ハイブリダイ
ゼーションプロセスにおける正解DNAの収量増加を
支援するために開発したシミュレーター、および、その有効性を実験により検証した
結果について紹介する。
 
[1] L. Adleman, "Molecular Computation of Solutions to Combinatorial Problems",
    Science, vol. 266, pp. 1021-1024, 1994.