1.二年草個体群に考えられる時間的に異なる2集団が同一空間に混在する条件
2.Spatial Autocorrelation Analysis(Moran's 1)における問題点とその解消案

鈴木 亮(東京都立大学・理・生物)

7月8日 (木) 午前10:30から
理学部3号館 6階 3631 数理生物学セミナー室


 
2か月間の九大研修のまとめとして、2つの話をします。
 
1.2年草個体群に考えられる時間的に異なる2集団が同一空間に混在する条件
 
一回繁殖型二年草についての個体群動態モデルを考えた。発芽後2年目に必ず繁殖を行う
真性二年草の個体群では、奇数年に発芽した個体と偶数年に発芽した個体が混在する場合
と、どちらか一方しか存在しない場合の2タイプが考えられる。発芽後一年目の個体と二
年目の個体をそれぞれ頻度X、Yで表しXとYの時間変化を表すモデルを組みたて、パラ
メーターとして生存率s,種子生産数f,遅延繁殖確率p(二年目に繁殖せず、三年目に繁殖を
延ばす割合をいれ、それぞれの値のへんかによって個体群がどちらの集団タイプになるか
を調べた。
 

2.Spatial Autocorrelation Analysis(Moran's 1)における問題点とその解消案

Moran's 1はあるdistance class(距離d-d+aの範囲)に関して、着目した1形質の座標系
間の相関を調べるものである。調べる対象は二点間の距離がd-d+aの範囲に含まれる座標
間になる。これをさまざまなdistance classでおこなうことで、(dをいろいろ変える)、
distance classの変化に伴ってそのclassの平均自己相関がどう変化していくかを調べるこ
とができる。つまり、着目した形質の空間パターンを調べることができる。例えば、パッ
チ上に、その性質が分布しているとか、gradientになってるとかいうことが調べられる。
しかしこの解析には次のような問題がある。
 空間の散在した座標点が、いくつかのクラスター(かたまり)になってる場合、クラス
ター内の近い距離の座標間で高い自己相関が生じていると、クラスター間の長い距離でも
有意な自己相関が生じてしまう可能性がある。つまり、実際クラスター内の近隣座標間の
関連性のみによって自己相関が生じているのにも関わらず、その統計結果を信じるならば
クラスター間の長い距離でも関連性があると解釈しなければならない。これはクラスター
間の過剰な組み合わせが原因である。セミナーでは実際にその問題が生じうることを示し、
その解消案を提案する。