Mathematical study of developmental phenomena.
(発生現象の数理的研究)

望月敦史(九大・理・生)

9月 20日 (月) 午後4:00から
理学部3号館5階生物学教室会議室


幾つかの具体的な発生現象を取り上げ、数理モデルを用いる事で様々な側面が明ら かになることを示す。
(1)接着力の性質が異なる2種類の細胞を混ぜ合わせ培養すると、自然に細胞クラ スターが形成される現象は細胞選別として知られる。格子空間上に2種類の細胞が存 在し、その分布が隣接2細胞間の入れ替えによって変化するモデルを用いて細胞選別 を解析した。移動速度は最近接細胞間に働く接着力に依存するとした。細胞の局所密 度の時間変化が細胞間接着力のパラメータの関数として得られた。これより、選別実 験の結果の写真だけから細胞間の差次接着性を推定できる。ニワトリ胚の肢芽中胚葉 細胞を用いた選別実験にこの方法を適用し、発生に伴う差次接着性の変化を推定した。
(2)魚類の網膜で各種の色に特異的感受性を持つ錐体細胞が規則的な配列をする。 4種類の錐体細胞をもつZebrafishの網膜面上では、青色感受細胞がある方向には2 細胞周期で現れ、直交する方向には6細胞周期で現れる。この形成機構はまだ分かっ ていない。分化した細胞の再配列により規則配列ができると仮定する細胞選別モデル を作り解析した。赤色感受性と緑色感受性の錐体が連結しているダブルコーンを一つ の単位として扱う仮定が必要だと分かった。各種の細胞間接着力を様々に変えて計算 機シミュレーションを行った。接着力の大きさがある条件を満たす時のみ規則配列が 形成されることが分かった。
(3)時間があれば、発生の過程を追跡せずに細胞系譜を推定する方法、すなわちラ ンダムに導入されたマーカーの特定の発生段階における分布の観測のみから細胞系譜 を推定する方法について紹介する。

注)この発表は学位審査会も兼ねています


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