DNAマイクロアレイによる酵母遺伝子発現解析

田代 康介(九大・院・生物資源環境科学研究科)

3月7日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室


各生物が保持する全遺伝子の構造が、ここ数年間のゲノムシーケンスプロジェクトの 進展により、次々と明らかにされつつある。この成果をどのように生かして、生命現 象の謎解きを行うのかは、次の大きな課題と言える。その一つとして、細胞内におけ るすべての遺伝子の発現量を一度にモニターするシステムの構築が考えられる。これ まで、細胞内における遺伝子発現の解析は、細胞から抽出したRNAをフィルター上に 固定し、遺伝子特異的プローブを用いて検出するノーザンブロット解析法や、各遺伝 子に特異的なプライマーを用いたRT-PCR法などによって行われてきた。しかし、 これらの手法では、微生物で少なくとも3000個、ヒトでは約10万個存在すると推定 されている遺伝子全てを一度にモニターすることは、実際的に不可能である。そのた め、SAGE法、atacPCR法などさまざまな方法が開発されつつあるが、やはり、数万種 類に対応するには難点がある。その中で、より簡便で直接的な方法として、DNAマ イクロアレイを用いた解析法が開発された。DNAマイクロアレイ法は、スライドガラ ス上に/・蕕・蘓・鋐弔DNAスポットを作製し、解析するRNAから調製したターゲッ トをハイブリダイゼーションさせ、ハイブリッド形成の強度を指標にして、各遺伝子 の転写量を測定する方法である。

 我々は、様々な状態の酵母を用いて、酵母内の全遺伝子の発現量をモニターし、発 現制御のネットワーク解明を目的としてシステム構築を行ってきた。ここでは、我々 がこれまで構築してきた実験系の概要を解説し、さらに、DNAマイクロアレイによっ てどのようなデータが取れるのか、また、今後どのようなデータが現れてくるのか、 などをお話したい。