ニューラルネットワークの話

 どうしてニューラルネットワークを使い始めたかというと、やっぱりEnquist & Arak (1993, 1994, 1998)の論文を学部生時代に読んだからです。最初はニューラルネットワークとは意志決定装置のシミュレーターだと考えていましたが、いまは非線形モデルの一つと考えています。

 動物は、羽、角、体色などの形質を用いて、また首やしっぽの振り方などのしぐさにより個体どうしのコミュニケーションを行っています。これらコミュニケーションの手段はシグナルまたは信号と呼ばれていますがこれらのシグナルの進化に興味を持っています。

 シグナルは、相手にシグナルとして認識されないと意味を成さないわけですから、派手でわかりやすい、物が望ましいわけです。が、あまり派手だと天敵にまで見つかりやすくなるし、また保有するのがしんどい、等のコストがかかります。伝えたい相手には、伝えやすくかつ伝えたく無い相手には全く伝わらないシグナルが一番良いわけですが、そんな都合の良い物があるはずが無く、シグナルとして進化する物はやはり、ひとくせもふたくせもある物になります。結局は、シグナル送信者ー受信者での進化ゲームとなるわけで、腹のさぐりあいをしている動物たちの腹の底を読みとる研究です。

 シグナルは、目や耳などの感覚器をとおして受信されるわけですが、感覚器の諸特性を考慮した研究というのは長い間無視されてきました。と言うよりも、受信は常に完全と考えられてきたと言う方が正確でしょう。近くメカニズムのモデルは、古くからありましたが、このモデルとシグナル進化の関連を結びつけるという研究はありませんでした。

   これら二つの研究を結びつけた研究チームが以前私がおじゃましたマグナス・エンキスト率いるストックホルム大学の研究チームです。これらの研究の総論は、Ghirlanda, S. 2002 JTB 214, 389-404に詳しいです。ニューラルネットワークもその知覚モデルの一つです。
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