デング熱は東南アジアや中南米で猛威を振るう伝染病である。その病原体であるデングウイルスには4つの異なる抗原亜型がある。それらは相同性が低く、ひとつの抗原亜型に感染して免疫を獲得したホストも、他の抗原亜型に再感染されうる。この再感染時には,デング出血熱へと深刻化し,死亡率が1回目の感染よりも桁違いに高くなる(エンハンスメント)。
 本研究では、2系統SIRモデルに交差反応とエンハンスメントを組み込んだモデルを構築し、平衡点の安定性を解析した。その結果、エンハンスメントがない場合は相同性が高くても抗原亜型は共存できるが、エンハンスメントが強い場合には相同性が低くなければ抗原亜型は共存できないことが分かった。デングウイルスの抗原亜型は東南アジアの同一地域で4つの抗原亜型に分岐し、広がっていったという事実から、現在観測されるデングウイルスはエンハンスメントが高いために、抗原亜型間の相同性を低くするように進化したと結論づけた。 。

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