マラリアは世界でもっとも深刻な伝染病のひとつであり、蚊の媒介を必要とする。マラリアを防除するために、媒介蚊を殺虫剤によりコントロールする戦略が用いられてきたが、殺虫剤抵抗性蚊の進化により、防除戦略はしばしば失敗に終わった。このため病原体が感染できない家畜(dead-end host)を飼育することにより、媒介蚊を家畜にひきつけ、人(amplifying host)への吸血頻度を減らすことにより、マラリアを防除する戦略(zooprophylaxis)に注目が集まっている。本研究では、zooprophylaxisと殺虫剤による媒介蚊のコントロールを組み合わせ、殺虫剤抵抗性蚊の進化を許さないマラリア防除戦略が可能であるかどうかを理論的に解析した。
 1)飼育家畜の個体数が少ないとき、殺虫剤をいくら多量に散布しても殺虫剤抵抗性蚊の進化により、マラリアは防除できないこと、2)しかし一定以上の家畜を飼うことによって、殺虫剤抵抗性蚊を進化させずに、マラリアを防除できる殺虫剤を散布できる領域が出現することが分かった。

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