アブラムシ色彩多型の初期進化プロセス: アブラムシ、テントウムシ(捕食者)、寄生蜂による分断的共進化

○佐々木顕(九大院・理・生物)、Sylvain Takenouchi (Ecole Polytechnique, France)


アブラムシAcyrthosiphon pisumの種内には鮮やかな色彩多型が知られており、しばしば同じ葉の上に異なる色彩の個体が混在して見いだされる。このアブラムシを捕食するテントウムシCoccinella septempunctataが体色の赤いアブラムシを好んで食うのに対し、寄生蜂Aphidius erviは緑色のアブラムシに好んで寄生する。このような捕食者と寄生蜂の色彩選好性の違いによってアブラムシの色彩多型は維持できるであろうか。また、そもそも捕食者と寄生蜂に逆方向の色彩選好性が進化することは可能なのであろうか?

ここでは、アブラムシの体色にわずかな遺伝的変異がある状態から、アブラムシ体色と捕食者と寄生蜂の色彩選好性がどう進化するかを3種の量的形質(アブラムシ体色、テントウムシの色彩選好性、寄生蜂の色彩選好性)共進化モデルで解析する。特に以下の疑問点に対して理論的解析にもとづいて論じる。

・色彩選好性進化の初期段階ではアブラムシの体色変異もわずかであったと考えられる。その状態から現在の鮮やかな色彩多型への分断的進化が起こる条件は何か。

・テントウムシの色彩選好性については葉上で目立つ色のアブラムシを好むという明確な適応的意義があるが、寄生蜂が隠蔽色である緑色を好むのは何故か?

・捕食者に対する警告色として鮮やかな色彩・模様が進化することはよく知られているが、警告の意味が無いアブラムシの鮮やかな体色が進化し維持されるのは何故か?






アブラムシ体色とテントウムシ・寄生蜂の色彩選好性の頻度分布の時間変化:振動を伴う多型の例。色彩値(横軸)は正方向がより目立つ色(赤)、負方向がより隠蔽的な色(緑)を表す。





[2001年3月 日本生態学会年会(熊本)]


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