ME SEMINAR 1997/3/19 Akira Sasaki

寄主・寄生蜂のencapsulationをめぐる軍拡競争共進化モデル


 encapsulationとは、寄生蜂に対する寄主免疫反応のひとつであり、体内寄生蜂の卵をタンパク質で包み込んで殺す反応である。特定の寄生蜂に対する寄主のencapsulationの能力、そして特定の寄主に対して寄生蜂がencapsulationを打ち破る能力の双方に大きな遺伝的変異の存在することが知られている。

 ここでは寄主抵抗性および寄生者ビルレンスの2つの量的形質によって寄主個体内の寄生蜂卵のencapsulationの確率が決まるとして、この両形質の共進化を寄主・寄生者個体群動態にもとづいた遺伝モデルで解析する。高い抵抗性をもつこと、および高いビルレンスをもつことはそれぞれコストがかかるとする。モデルの解析により以下のような結果を得た。

● 寄主の形質と寄生者の形質が中間の値でバランスする状態が、共進化的に安定になることはほとんどなく、 (a) 一方の種が完全に軍備を捨て、相手側の圧倒的優位を許す平衡状態で安定化するか、(b) 順番に優位性が逆転しながら形質がエスカレートしたのち、一方が形質を最小値に落として出発点に戻る共進化サイクル、のいづれかの挙動が予想される。

●この共進化のプロセスは、連続な形質分布から出発しても、しだいに飛び飛びの形質値の間の不連続的な(断続平衡的な)飛躍過程に近づく。

● 平衡状態で完全に軍備を捨てる種、および形質のエスカレーションから最初に脱落するのは寄主の側である(life-dinner principle)。

● 共進化は個体群動態を不安定化する。


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