宇野・伊藤「恐慌」モデルの動学


熊澤大輔
(Ritsumeikan University)

12/11/16, 15:30- at Room 3631 (6th floor of building 3 of the Faculty of Sciences)


マルクス経済学の代表的な恐慌理論の一つである宇野恐慌論を数理モデル化し、その動学を検討する。宇野恐慌論は記述形式でなされているため、宇野弘蔵(1981)と合わせて、必要な定式化を置塩信雄・伊藤誠(1987)から得ている。宇野派の骨子は、好況により労働不足が生じると、賃金が上昇し利潤率が下落する結果、蓄積が減少し恐慌が発生すると考えている点にある。このような資本家と労働者間の分配関係の変化を通じて循環が生じることはGoodwin, R.M.(1967)によって示されている。しかし、宇野恐慌論では債券市場の効果を重視しており、これを分析に加える必要がある。宇野・伊藤「恐慌」モデルでは、債券市場の影響を導入した結果、財市場の調整速度が十分速いとき、不連続な運動であるカタストロフが生じ得ることを論証する。また、この体系がセイ法則(生産されたモノは必ず販売されること)を前提にしており、販売不可能によって恐慌に至るという資本制の特徴を無視しており、景気循環モデルとしては不完全であることを確認する。


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