佐藤 永(九大・農・生物環境調節研究センター)
01/05/15, 13:30- at Room No.3631 (6th floor of the 3rd building of the Faculty of Sciences)
植物の性表現には大きな多様性が存在し、それぞれの性表現の 出現頻度は大きく異なる。この多様性と各性表現の出現頻度の違いを説 明するために、過去より多くの理論的研究がされてきた。その際、いず れの研究においても、資源のトレードオフが1花内で生じることを仮定 したモデルが用いられてきた。しかし、近年の経験的な研究では、繁殖 資源を巡るトレードオフは、1花内でよりも、花の大きさと数との間で 強く働くことが一般的であることが強く示されてきている。そこで、そ のような花の大きさと数との間のトレードオフを仮定したESSモデルを 構築し、各性表現の進化条件について再検討を行った。その結果、花弁 など送粉動物を誘因する器官への資源配分量を増やしたときの送粉動物 訪問数の上昇パターン(以下、訪問カーブ)が、対数曲線であることを 仮定した場合、高い自殖率と強い近交弱勢の元で、Gynodioecy(集団が 両性株と♀株から構成されるという性表現)が進化することができると いう予測が得られた。この予測は、従来のモデルからの予測と何ら変わ らない。他方、訪問カーブにシグモイド型曲線を仮定した場合、 Androdioecy(集団が両性株と♂株から構成されるという性表現)が進 化することのできるパラメーター範囲が極めて広いことが示された。し かし、Androdioecyは極めて稀な性表現であり、この予測は現実と矛盾 している。これらから、動物媒植物の性表現進化における、訪問カーブ の形の重要性について議論を行う。 |