変動環境における最適保全戦略の数理的研究

横溝 裕行(九大・院・生物)

02/03/05, 13:30- at Room No.3631 (6th floor of the 3rd building of the Faculty of Sciences)



 生存率に確率的なノイズが加わる個体群について、最適な保全努力量を考える。保 全努力を増やせば絶滅リスクは減らせるが、経済的なコストを伴う。そこで、絶滅リ スクと保全努力の経済的なコストの和を全コストと定義し、これを最小にするような 最適保全努力量を求めた。その結果、最適保全努力量はノイズの分散だけではなく、 ノイズの確率分布型(指数分布、正規分布、一様分布)に大きく依存することがわか った。また、絶滅のリスクと保全努力のコストの相対的な重要度、保全努力の効率や 保全期間にも影響される。また、絶滅リスクを保全期間の絶滅確率の場合と絶滅まで の平均時間を考えた場合では、保全努力量や絶滅確率が大きく異なる。  また、パラメータの感度分析を行った。保全努力量は、個体数やノイズの分散など の推定したパラメータの値により決定される。そのため、推定値が正しくないと、絶 滅リスクが増加したり保全努力が過剰になる。そこで、誤差を含んだパラメータに基 づいて保全活動を行った際の、全コストの増加量をパラメータ推定エラーのコストと して求めた。その結果、全コストや絶滅確率の増加に大きな影響を与えるパラメータ ではなく、保全努力量に大きな影響を与えるパラメータが、コストの増加に重要であ ることがわかった。また、保全努力量を決定する際に推定すべきパラメータは複数あ る。推定のための努力量に限りがある場合に、それぞれのパラメータにいくらずつ分 配するべきかについても検討する。