葉脈のパターン形成は植物発生学における重要な研究主題の一つである。実験的研究
から auxin の流れが葉脈形成に重要であることが示唆されている。Arabidopsis
などでは1次脈が葉の基部から先端へと伸び、その後2次、3次脈が形成される。葉
脈パターン形成を説明する有力な仮説として、Sachs による canalizationmodel
と、Meinhardt による反応拡散モデルが提唱されている。canalization model では
auxin flow
に依存して葉脈が形成されるとしており、逐次的な葉脈形成を説明できる一方、Koiz
umi
らによって報告された、葉脈が不連続に形成される突然変異体のパターンを説明でき
ない。Meinhardt らによる activator-inhibitor
反応拡散モデルでは、不連続な葉脈パターンを説明できるものの、パターンの逐次的
形成の説明や、auxin flow との擦り合わせが困難である。 我々は、葉の辺縁部で合成された auxin を消費しながら葉脈が伸長してゆく、という auxin 消費型反応拡散モデルを提案する。このモデルは、従来の2仮説の長所を兼ね備えて おり、これまで対立すると考えられていた2つの仮説を矛盾無く統合することができる。 すなわち従来の仮説では困難であった、逐次的葉脈形成および葉脈が不連続になるミ ュータントのパターンを同時に説明することが可能となる。また葉脈パターンの多様 性もわずかなパラメータの変化によって作り出せると期待している。 |