auxin 消費型反応拡散モデルによる葉脈パターン形成の説明

遠矢 周作

(九大・院・生物)

2002年 9月 7日 (土), 午後1:30より 3631室 (理学部3号館6階 数理生物学セミナー室)


葉脈のパターン形成は植物発生学における重要な研究主題の一つである。実験的研究 から auxin の流れが葉脈形成に重要であることが示唆されている。Arabidopsis などでは1次脈が葉の基部から先端へと伸び、その後2次、3次脈が形成される。葉 脈パターン形成を説明する有力な仮説として、Sachs による canalizationmodel と、Meinhardt による反応拡散モデルが提唱されている。canalization model では auxin flow に依存して葉脈が形成されるとしており、逐次的な葉脈形成を説明できる一方、Koiz umi らによって報告された、葉脈が不連続に形成される突然変異体のパターンを説明でき ない。Meinhardt らによる activator-inhibitor 反応拡散モデルでは、不連続な葉脈パターンを説明できるものの、パターンの逐次的 形成の説明や、auxin flow との擦り合わせが困難である。
我々は、葉の辺縁部で合成された auxin を消費しながら葉脈が伸長してゆく、という auxin 消費型反応拡散モデルを提案する。このモデルは、従来の2仮説の長所を兼ね備えて おり、これまで対立すると考えられていた2つの仮説を矛盾無く統合することができる。 すなわち従来の仮説では困難であった、逐次的葉脈形成および葉脈が不連続になるミ ュータントのパターンを同時に説明することが可能となる。また葉脈パターンの多様 性もわずかなパラメータの変化によって作り出せると期待している。