イシサンゴにおける種内接触:
成熟サイズ・齢の可塑性
酒井 一彦 (琉球大・熱生研・瀬底実験所)
sakaikz@ryukyu.ne.jp
7月2日 (木) 午後3時00分より
九大理学部3号館 6階 3631
数理生物学セミナー室
本研究では、塊状の群体性イシサンゴ、パリカメノコキクメイシの野外個体
群の調査結果をもとに、種内接触(同種他群体との接触)が生活史形質に及ぼす影響
を明らかにした。
パリカメノコキクメイシは雌雄同体で、種内接触のない場合にはポリプ数60(推定
年令6歳)で成熟する。調査域では個体群密度が高く(85/・)、集中分布し、群体の
56%が種内接触していた。一般にサンゴは種内および種間接触で一方が他方を部分的
に殺すが、本種は種内接触により互いに傷つくことがない。種内接触により小さい群
体の成長率が低下し、生存率が上昇し、より小さくかつ若く成熟した。種内接触のな
い場合の成熟サイズと齢の進化には、成熟前に繁殖に投資せず成長し、大きい群体サ
イズとなり配偶子生産量を増やすことが最も重要であり、大きくなって死亡率が下が
ることの重要性はより低いと考えられた。したがって種内接触により成長率が低下す
ることが、成熟サイズ・齢の進化にとって最も重要であると考えられる。
個体群と繁殖のデータより構築した静的生命表は、種内接触した場合の適応度がし
ない場合よりも低いことを示した。このことからパリカメノコキクメイシでは種内接
触をより頻繁に起こすように進化したのではなく、個体群密度が高いことによって起
こる種内接触条件下でのBBSが進化したと結論する。