遺伝的アルゴリズムにおいて
組み換えが新しい機能の進化を加速する効果
鈴木秀明(本田技術研究所基礎研究部門)
九大理学部3号館 6階 3631
数理生物学セミナー室
遺伝的アルゴリズムと呼ばれる工学の最適化手法を用い、遺伝的組換え(交叉)がど
のような条件下で進化を加速する働きを持つかを解析した。この問いは数理生物学の
課題である有性生殖の進化的意義の基本問題に対応している。
ある数の改良が揃ったときに適応度が急にあがるが揃わないと効果がない、という
場の進化パターンは、中立進化(集団の平均適応度にほとんど変化のない時期)と適応
進化(平均適応度が大きく増加する時期)が交互に起こる不連続なものとなる。そして
その進化スピードはおおまかに言って、ある適応進化と次の適応進化とで挟まれた中
立進化の時間によって決まる。
さまざまな解析の結果、交叉は、揃うべき改良の数がある程度大きく、かつ有利な
ビットの組合せの適応度が中立なものに較べて充分に大きく、しかも突然変異率およ
び交叉率が適当(中庸)な値に調節されているときに最も大きな加速効果を示す。
組換えのもつこの効果は、高等生物において、有利な遺伝子セットによる劇的な適
応進化(飛躍的に適応度を増大させるような進化)を速く導き出すのに大きな助けにな
っていると考えられる。