ミューラー型擬態における羽パターンの境界線の
移動スピードの計測
川口 勇生 (九州大学・理・生物・数理生物)
7月30日 (木) 午後1時30分より
亜熱帯性のチョウHeliconius eratoとH.melpomeneはミューラー型擬態の関係にあ
る。ミューラー型擬態とは味のまずい種同士が互いに似通ってくるというような擬態
で、同じ地域に同じ羽の模様の種類がいるというような、平行的な地理分布をしてい
る。本研究ではこの地理分布に注目し この羽のパターンの境界線の移動のスピード
について調べた。
(1)羽の模様のパターンがA・B2種類あるチョウを仮定して、捕食者はチョウ
を食べるとまずいと思い、まずさの度合いによって羽の模様を覚えるとする。つまり
チョウは同じ羽の模様を持ったものが多いと死ににくくなる。Aパターンの羽の模様
を持っている種の頻度をpとして、チョウが1種で1次元上にいるとき拡散方程式を
用いて羽パターンの移動スピードを計測した。この拡散方程式は従来のFisher型とも
う一つ別のBarton型の2つの進行波のスピードを持っており、またこの拡散方程式を
直接シミュレーションした値は方程式の二つのスピードが接する点で乗り換えが起こ
ることを示した。
(2)1次元の格子上に2種のチョウがそれぞれ2つの羽パターンを持っていると
して、ある場所から左はAパターンを、右にはBパターンを固めて並べた場合のパター
ンの境界線の移動スピードを解析した。解析的に得られた式と、シミュレーション値
はよく一致しており、これらは2種の羽の模様のパターンの類似性が高いほど境界線
の移動スピードは遅くなることがわかった。