パッチ状環境で餌をめぐって競争する2種の捕食者の共存可能性<
難波 利幸(大阪女子大学・学芸・基礎理)
10月1日 (木) 午後 3 時30分より
ロジスティック成長をする被食者と,HollingのII型(飽和型)の機能の反応をもつ
2種の捕食者を考える。これは,間接競争をする2種の捕食者のモデルであり,Hsu,
Hubbell,and Waltman(1978)の研究により,餌密度が低い場合と高い場合とで2種の
捕食者の成長率が逆転するならば,2種の捕食者が振動状態で共存できる場合がある
ことが分かっている。
二つのパッチからなる環境で,この系に捕食者の拡散型の移動を導入する。被食者
の環境収容力と捕食者の拡散係数を残し,他のパラメータは,餌密度が低いときは捕
食者Pが有利,高いときは捕食者Qが有利となる値に固定する。移動がないとき,被
食者の環境収容力Kが大きくなるにつれ,Qが絶滅してPが生き残る安定平衡状態,
Qが絶滅してPが残る安定周期解,2種共存の安定周期解,Pが絶滅してQだけが生
き残る安定周期解が現れる。Kが小さなパッチは,孤立しているときにはQが存続で
きないのでQにとってはsinkとなり,Kが大きなパッチは,Qにとってはsourceであ
るがPにとってsinkとなる。
拡散係数を適当に選べば,パッチの一方または双方がsinkであって,移動なしには
共存できない場合でも,2種の捕食者の共存が可能となることを示し,Lotka-Volter
ra型の競争やメタ個体群モデルとの関係を考える。