群体性イシサンゴ、パリカメノコキクメイシの
生活史と繁殖生態に関する研究:
特に種内接触が及ぼす影響について
酒井 一彦(琉球大・熱帯生物圏研究センター・瀬底実験所)
11月24日 (火) 午後1:00

 本研究では塊状の群体性イシサンゴ、パリカメノコキクメイシの自然個体群の調査結 果をもとに、互いに傷つけあうことのない種内接触が、生活史形質に及ぼす影響を明 らかにした。
 パリカメノコキクメイシは雌雄同体で、種内接触のない場合にはポリプ数60(推定 年令6歳)で成熟する。調査域(潮間帯下部)では個体群密度が高く(85/・)、群体 の50%以上が種内接触していた。種内接触により小さい群体の成長率が低下し、生存 率が上昇し、より小さくかつ若く成熟した。[精巣/卵]比は、群体サイズや種内接 触の有無に関わらず、一定であった。群体の成長にともない、種内接触した群体数が 増加したことと、個々の群体の接触の程度(群体の縁にあるポリプの何%が種内接触 したか)と群体の成長率が逆相関することは、種内接触による反応が、表現型の可塑 性であることを示唆する。
 種内接触のない場合の成熟サイズと齢には、大きい群体となる前に繁殖に投資せず 成長し、配偶子生産量を増やすことが最も重要であり、大きくなって死亡率が下がる ことの重要性はより低いと考えられた。したがって成長率が低下することが、種内接 触条件下での成熟サイズおよび齢にとって、最も重要であると考えられる。
 個体群動態と繁殖のデータより構築した静的生命表は、種内接触した場合の適応度 がしない場合よりも低いことを示した。また群体の分布型は、ランダムであった。こ れらの結果から、種内接触をより頻繁に起こすよう幼生が集中的に定着するのではく 、個体群密度が高いことによって種内接触が頻繁に起こり、次善の策としてより早く 成熟すると結論される。