上野高敏(九大農生防研)
6月 1日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階 3631 数理生物学セミナー室
多くの寄生蜂は寄主昆虫を産卵場所,つまり子の餌資源として利用する一方で,卵
生産や探索活動用の餌資源としても利用する.ようするに捕食者と同様に寄主を摂食
する.寄主摂食は卵の生産や,時には代謝維持,のために必要不可欠な行動であるが,
その一方で寄主摂食に利用した寄主は,産卵場所としては利用できなくなってしまう.
したがって雌蜂は将来の繁殖を確保するため寄主を食べるのか,それとも目先の繁殖
成功をゲットするために産卵するのかの,二者択一的な意思決定を行う必要がある.
このような条件下ではどのような寄主摂食行動が適応的なのであろうか?明らかにな
った重要な要因としては,産卵場所としての寄主の質,摂食のしやすさ(時間や労力
をかけずに食べれるかどうか),利用可能な寄主の数,現在の産卵に利用できる保有
卵数,卵生産に利用できる保有資源量,などが重要であった.
またこのような要因に応じた寄主摂食意思決定は理論的にも最適なものであると予測
された.同時に,こういった寄主摂食行動は,寄生蜂間の競争や,寄主ー寄生蜂個体
群動態に大きな影響を及ぼしうるものであると考えられた.
Keywords: parasitoids, compensatory feeding, nutritional state, egg load,
host-feeding, foraging theory, dynamic behavior, food availability, time-
and energy-savings, handling time, energy load, reproductive success, host
selection, competition, host-parasitoid population dynamics.