The Evolution of Social Interaction in a Spatially Structured Population
(空間構造の社会的相互作用の進化への影響について)

中丸麻由子(科学技術振興事業団、CREST 研究員)

6月 22日 (火)  午後4:00から
九州大学理学部生物学教室会議室(3号館5F)


  
利他(協力)やスパイトのような自分の適応度を下げてしまう行動が進化する時に、
空間構造はどのように影響するだろうか?数理モデルやコンピュータシミュレーショ
ンを用いて研究した。
 空間構造がない場合、利己行動ばかりの集団中では、利他行動は利益をむさぼられ
て進化できない。そこで格子モデル(セルラオートマタ)を導入した。格子上では隣
接個体と相互作用をすると仮定するので、利他行動の個体が少なくても偶然隣にいれ
ば、利他行動同士で相互作用をしてお互いの適応度をあげることができる。その結果、
利他行動は利己行動ばかりの集団中にも進化できるようになった。しかし、条件によっ
ては空間構造の影響のために逆に利己行動の進化が促進された。
 次に大腸菌を例に格子上でのスパイト行動の進化について議論した。コリシン生産
性菌は典型的なスパイト行動であり、自らコストをかけて毒を作り、周りのコリシン
感受性菌を殺す。空間構造がない場合では感受性菌の占める集団には進化できない。
しかし格子モデルでは、生産性菌は隣接する感受性菌を殺した跡地にコロニーを拡大
していくので、感受性菌ばかりの集団にも進化するようになった。
 自然界にはこの2種以外にコリシン耐性菌という、毒は作らずに耐性のみ持つもの
がいる。格子モデルではこの3種は共存したが、拡散反応系では耐性菌の振る舞いが
ネックになって共存は起こらなかった。よって、空間構造のモデルでも格子モデルか
拡散反応系であるかによって集団動態や進化のダイナミクスが違ってくる。

(注)このセミナーは学位発表会も兼ねています。