交配前隔離・交配中隔離と多様性の進化

河田雅圭(東北大・理・生物学)

6月 23日 (水) 午前10:00から
理学部生物学教室第3講義室


  
 生物の集団間の多様性の進化を促すもっとも重要な機構は、集団間で生じる生殖隔
離である。繁殖隔離の進化を考える上で、交配後あるいは接合後隔離の成立は重要で
あるが、交配後隔離によって新しい繁殖隔離集団が形成されるまでには比較的長い時
間を要する。それに対して、短い時間の間で急速に種分化が生じている群集では、交
配前隔離機構の進化による多様性の増大が重要である。しかし、同所的あるいは側所
的に分布する2つの集団の間で交配前隔離がどのような条件のもとで進化するのかと
いう問題はまだ未解決である。そこで、今回は、交配前隔離の進化に関わる問題点に
ついて論議し、新たな配偶者選択による交配前隔離の進化機構を提唱する(静岡大吉
村氏と一部共同)。

 また、別の接合前隔離機構として、交尾器の形態の違いによる隔離(機械的隔離)
がある(これは交配中隔離といえる,片倉,1996)。交配中隔離の現象でよく知られ
ているのがオサムシである。現在、オサムシの交尾形態と雑種適応度をもとに、交雑
帯で交尾器がどう進化するかを検討中である(東京大学久保田氏と共同)。
そこで、今回のもう一つの話題として、オサムシの交雑帯での交尾器の進化について
論議したい。