ショウジョウバエの概日時計機構解析

松本顕(九大・大学教育研究センター)

1月25日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室


 概日時計機構の分子メカニズムの研究は、キイロショウジョウバエの突然変異体の 解析結果を中心に進展してきた。現在、period遺伝子の転写に関する負の自己フィー ドバックループを中心とした概日時計の分子メカニズムのモデルが提唱されている。 このループにかかわる分子として、PERタンパクを核に輸送するtimeless、PERの崩壊 に関与するキナーゼdouble-time、perやtimの転写活性化因子であるClockとcycle、 光受容体候補のcryptochromeが同定され、これらの分子の哺乳類、魚類でのホモログ も見つかっている。一方、アカパンカビやシアノバクテリアでも時計遺伝子が同定さ れている。これらの分子の構造にはハエや哺乳類の時計遺伝子産物との相同性はほと んどないが、ある時計遺伝子の転写に対する負の自己フィードバックループを形成し ている点で種を超えた共通性が見つかっている。しかし、概日時計の周期が何故24時 間なのかといった基本的な問題を初めとして、概日時計の分子機構はいまだ充分な解 明がなされたとは言い難い状況にある。我々は、概日時計機構のさらなる解析を目指 し、新たな時計突然変異体の分離・解析を行ってきた。本セミナーでは、まず現在ま での概日時計機構の分子メカニズム解析を概略し、続いて我々の解析結果に関しても 報告したい。