遺伝子の過剰発現によるY染色体の進化の可能性

岩永亜紀子(九大・理・生物)

5月16日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室


【目的】有性生殖を行う生物では多くの場合2つの接合型が存在し、それぞれ雄と雌 と呼ばれる。これらの性を決めるシステムの一つに染色体性決定があるが、本研究で は、遺伝子の過剰発現がきっかけになってXY染色体性決定が進化する可能性を、数理 モデルによって検討する。                              
【方法】有性生殖を行う接合型のない2倍体の集団において、遺伝子重複や環境変動 等によってある遺伝子の発現量が過剰になった状態を初期状態とする。この集団中に 遺伝子の発現が抑制された変異体が生じることで、野生型(XX)と変異体(XY)の間で選 好性が進化しY染色体性決定が成立する可能性をシミュレーションにより解析する。

【結果】進化の最終状態としては、XXとXYとの交配が失われる場合、XXとXYとの間で のみ交配が成立する場合(XY染色体性決定に相当)、XYが淘汰されて集団に広まり えない場合という3つのパターンが存在しうる。どの状態に収束するかはパラメータ に依存する。XYの適応度がXXの2倍前後のとき、XY染色体性決定に相当する交配パ ターンが進化しやすいことが示された。