魚類錐体モザイク形成の種間での多様性を理解する

遠矢 周作(九大・理・生物)

6月20日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室


魚類の網膜上では異なる光波長に感度のピークを持つ4種類の 錐体細胞(B,U,G,R)が、規則正しく並んだ錐体モザイクをつ くる.また,緑(G)と赤(R)感受性の錐体細胞のペアがひと つのダブルコーンを形成している.実験的にはこのパターンの 生成メカニズムはまだ明らかではない.  このパターンが形成されるメカニズムを、異なる生物学的仮 定に基づいた幾つかの数理モデルを解析することで明らかにし た。分化済みの細胞が細胞間接着力に依存して移動をすると仮 定したセルソーティングモデルで、ゼブラフィッシュのパター ンを説明できることがわかっている。今回、同一の枠組みのモ デルに異なる接着力の組合せを与えた時にもう一つの代表的な モザイクであるメダカのパターンも説明できることを示す。  また細胞の位置の変化はなく状態変化によってパターンがで きると仮定すると、パターンが形成されるための細胞間相互作 用の条件が非常に厳しくなることが分かった。この場合でも多 段階の運命決定を考えることで、メダカのパターンを再現でき た。  以上から錐体モザイクパターンの魚種間での多様性は、細胞 間相互作用の大きさの進化により説明できる。