水野寿朗(鹿児島大学・理・生命化学)
7月14日 (金) 午後1:30から
理学部3号館 6階 数理生物学セミナー室
両生類胚の中胚葉は、一般に植物極側の組織から動物極側の組
織への誘導によって形成されると考えられている。これは「中胚葉
誘導」と呼ばれ、「胚誘導」の典型とされている。しかし、中胚葉
を誘導する既知の遺伝子産物は、植物極のみに分布するわけではな
い。では、先験的に誘導因子を仮定せず、空間的な相互作用のみに
よって中胚葉誘導を説明することが可能だろうか?この点を検討す
るため、形態学的な制約条件を持つ反応拡散モデルを構成した。形
態学的な条件とは、胞胚の細胞の密度が動物極側ほど高いことを踏
まえ、空間あたりの相対的な反応生産量を動物極側で高く、植物極
側で低く設定することである。因子量の増加を中胚葉の分化と見做
し、このモデルに対して実験形態学的な移植実験を模したところ、
植物極側から動物極側への「誘導」が観察された。前提条件として
因子量を増加しにくい領域(植物極側)が誘導源として働くことは、
誘導源に必ずしも特異的な誘導因子は存在しないことを意味する。
また、植物極を誘導源とする古典的理論は移植実験の結果に基づい
ているが、実験形態学的な誘導の意味を、細胞間相互作用の一側面
として捉え直す必要があると思われる。
Nieuwkoop recombination experiments have shown that
the vegetal region is responsible for the inducing-signal
of "mesoderm induction," although potent inducing-
molecules (e.g. activin) are not vegetally localized in
early amphibian embryo. I propose that this problem can
be solved by the arranged reaction-diffusion model,
which is restricted by morphology. As a consequence of
transplantation in this model, the vegetal tissue function
as "inducer" on the assumption that vegetal side is
defined by smaller productivity of reaction. This result
suggests that the high concentration of inducing-
molecules is not required for the inducing-tissue under
cell-cell interactions.
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