Evolution of hierarchical cytoplasmic inheritance in Myxomycota

岩永亜紀子(九大・理・生物)

7月24日 (月) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室



真正粘菌(Myxomycota)には単相の粘菌アメーバの世代と、 それらが接合してできる複相の世代がある。配偶子である粘菌 アメーバには多数の接合型があり、核の遺伝子(MatA)が支配 している。真性粘菌の接合型間には、ミトコンドリアの伝達に 関して直線的な順位関係があり、接合子はより高順位の接合型 を持つ配偶子からのみミトコンドリアを受け継ぐ。本研究では、 この直線的な順位関係ができる過程を明らかにする。  n個の接合型と、接合型を決める遺伝子とは別に細胞質伝達 抑制をコードする遺伝子があるとする。抑制強度の異なるm個 の対立遺伝子を考える。接合の際、抑制力が異なれば抑制力の 強い方が相手の細胞質の伝達を阻止する。同じ抑制力の場合は 双方の細胞質が伝達される(heteroplasmy)。この場合、細 胞質間のコンフリクトのため接合子の適応度はαだけ下がると する。モデルのシミュレーションの結果、各接合型に様々な抑 制因子が分布している状態から出発しても、1つの接合型を単 一の抑制因子が占める状態に収束することがわかった。つまり 接合型間の直線順位が成立する。また、接合型と抑制因子の遺 伝子との間に組み換えがある場合や、抑制因子間の強弱関係が 連続的な場合、抑制因子がミトコンドリア遺伝子にコードされ ている場合についても検討する。