政治学から生物学へ
- [白鯨]vs[アメリカの民主主義] -

武田裕彦(九大・理・生物)

9月19日 (火) 午後1:30から
理学部3号館 6階  数理生物学セミナー室




つい最近(2000年2月10日発行)、紀伊國屋書店から 「鯨と原子炉」Langdon, Winner 著/吉岡斉、若松征男訳 という本が出版されました。

鯨は生物学の対象であり、原子炉は技術の対象であるとして この本は技術 -> 政治学のつながりを主に考察の対象としています。 鯨は第十章で原子炉の対照として現われるのですが、

> 前者は悠久の生態系の中で優美に泳ぐ巨大な被造物であり
> 後者は技術社会の複雑なメカニズムによって自ずと産み出された巨大な装置の
> 塊である。

> 現代技術はかつて存在しなかった場所に向って発展する

鯨から原子炉へ(技術から政治学へ)という流れを追うために どのような考え方を準備しておけばよいのか、という問題意識がこの本の 主題である、と仮定して論を進めていくと、どこかで問題意識が逆転して (政治学から技術へ、生物学へ)という流れが現われます。 本の主題を丁寧に追い、とりわけそこに提示される政治学をよく修めることが 論の後半に現われる問題意識の逆転をうまく活かすことにつながる、 とりわけ具体的な生命現象への応用が可能である。 ということを示したく思います。