分散距離の制約がもたらす共存:アリ群集を例にとって

佐竹暁子(九大・理・生物)

00/12/18, 13:30-
at Room No.3631 (6th floor of the 3rd building of the Faculty of Sciences)



共通の資源をめぐって競争する生物が共存するためのキーファクターとして,競争能 力と移住分散能力のトレードオフの必要性が強調されてきた(Tilman 1994, Tilman et al. 1994).群集生態学では,このトレードオフをコンセプトとしては受け入れて いるが,それを野外で検証した例は少ない.その理由として,生物個体の分散スケー ルや移住効率,生息地の質を野外で特定するのは難しいことが考えられる.
しかし,南米ペルーでの野外調査は,このような困難を解決できる理想的な系を対象 に進められている.そこでは,共通の植物に巣をつくる2属の異なったアリが,繁殖 能力や分散能力の違いによってどのように共存しているのかが研究されてい る(Yu et al. manuscript).
本セミナーでは,彼らの野外データおよびモデルをもとに,共存のメカニズムを理論 的側面を中心に検討する.とくに2属のアリの相対頻度が宿主植物の密度に依存して 大きく変化することを示した野外データの背後には,どのような生物間相互作用が働 いているのかを,夏期にImperial Collegeに滞在した思い出を交えながら格子モデル を用いて解析する.

参考文献

Tilman 1994 Ecology 75: 2-16
Tilman et al 1994 Nature 371: 65-66.