数理生態学と関連分野の参考図書
[数理生態学(共立出版)]のあとがきより
 
 
 ここでは日本語でよめる参考文献を中心にあげる。

数理生態学:

『数理生物学入門:生物社会のダイナミックスを探る』(巌佐庸著,HBJ出版局):数理生態学の標準的教科書。

『侵入と伝播の数理生態学』(重定南奈子著,東京大学出版会):外来生物の広がりについてのすぐれたモノグラフ。

『生物の適応戦略:ソシオバイオロジー的視点からの数理生物学』(巌佐庸著,サイエンス社):適応戦略のモノグラフ。

『なわばりの生態学』(長谷川政美・種村正美著,東海大学出版会):なわばりの形や大きさ,生物の空間配置など。

『数理生態学』(E.C. ピールー,南雲仁一ほか訳,産業図書):生物の空間配置の統計学に詳しい。

『繁殖戦略のモデル』(山村則男著,東海大学出版会):動物の交尾ガードなど。


生物数学:

 ここでは,生態学の話題にもとづいて得られた数学モデルを対象として,数学としてきっちり解析するという数理科学の分野の本を紹介しよう。数理的側面に興味をもつ読者にはよい本である。

『生物の進化と微分方程式』(ジグムント, K.・J.ホッフバウアー著,竹内康博訳)現代数学社:生態学や集団遺伝学,ゲームモデルなどについて数理的な解析をしている。

『自然現象と確率過程』(福島正俊・石井一成著,日本評論社):拡散過程などの確率過程のかなり進んだ説明とともに,集団遺伝学における確率モデルが紹介されている。

『ランダム現象の数学』(寺本英著,吉岡書店):種の多様性や種あたりの個体数の関係など。

『生物学における確率過程の理論』(寺本英ほか訳,産業図書)

『現代数理科学事典』(広中平祐監修,大阪書籍):このなかの数理生物学(三村昌泰編)の諸項目においては,生態学,集団遺伝・分子系統学,時間生物学,形づくり,神経系,人口学などの分野が取り上げられており,これまでの数理生物学の活躍がうまく概観できる。


関連分野:

以下には生態学の関連分野である進化ゲーム、進化遺伝学、分子進化学、生物資源解析学についての書物を紹介する。数理的側面について詳しく書かれているものを選んだ。

『進化遺伝学』(J.メーナード=スミス著,巌佐庸・原田祐子訳)産業図書:進化に関係する遺伝学の全分野を分かりやすくバランスよく解説した標準的教科書。

『進化とゲーム理論:闘争の論理』(J.メイナード=スミス著,寺本英・梯正之訳)産業図書:進化ゲーム理論をつくった本人が著者となったオリジナルな本。動物行動を理解するには必読の書。

『つきあい方の科学』(R.アクセルロッド著,松田裕之訳,HBJ出版局):人間や生物の間で協力関係が発達してくるための条件に関する考察。

『利他行動の生物学』(青木健一著,海鳴社)

『量的遺伝学』(D.S.ファルコナー著,田中嘉成ほか訳,蒼樹書房):選抜・人為淘汰などによる生物の進化をとりあつかう量的遺伝学への標準的教科書。

『動物生態学』(伊藤嘉昭・山村則男・嶋田正和著、蒼樹書房):動物生態学の教科書で、数理的取り扱いがていねい。

『分子系統学』(長谷川政美・岸野洋久著,岩波書店):遺伝子系統樹の解析方法や統計学に詳しい。

『分子進化遺伝学』(根井正利著,五条堀孝・斉藤成也訳)培風館

『分子進化の中立説』(木村資生著,向井輝美・日下部真一訳)紀伊国屋書店:中立説養護の決定版。

『水産資源管理論:生物経済モデルと漁業管理』(クラーク, C.W.著,田中昌一ほか訳,恒星社厚生閣):動的最適化による資源管理。
 

日本での数理生態学の活動について概観するのによい学会誌の特集号を2つ:
日本生態学会誌 45巻(2号)1995年 特集「数理生態学の魅力」 pp.161-197.:さまざまなテーマについての数理生態学の6本の論文。

日本生態学会誌 46巻(1号)1996年 特集「森林生態学の展望:シュートから地理分布動態まで」 pp. 53-107.:樹木の形から森林生態系までのモデルの解説。10本の論文。


英語のものも数冊:

Murray. J. (1989) "Mathematical Biology" Spriner Verlag.":かなり分厚い本。生態学だけでなく、生物リズムの振動子モデルやパターン形成に関する偏微分方程式モデルにも詳しい。

Bulmer, M. (1994) "Theoretical evolutionary ecology."  Sinauer Assoc.:Sunderland, Mass. :進化生態学についてバランスのよくとれた本。著者のオリジナルな仕事も紹介されていて優れた視野を与える。

Roughgarden, J. (1979) "Theory of population genetics and evolutionary ecology: an introduction."  MacMillan: New York. :生態学と集団遺伝学の基礎について分かりやすく書かれている。

Renshaw, E. (1991) "Modelling biological populations in space and time."  Cambridge University Press: Cambridge.:生態学での確率モデルに詳しい。

Anderson, R.M. and R.M. May (1991) "Infectious diseases of humans: dynamics and control." Oxford University Press: Oxford.: ヒトの感染症のモデル。

Mangel, M. and C.W. Clark (1988) "Dynamic modelling of behavior." Princeton University Press: Princeton.:動的最適化による動物行動のモデリング。


日本での数理生物学の学会:

数理生物学懇談会(事務局長:難波利幸大阪女子大学基礎理学科教授、電子メールアドレスはtnamba@center.osaka-wu.ac.jp)があり、年に1回の数理生物学シンポジウムを開き、ニュースレターを数回発行している。数理生物学関係に興味をお持ちの読者は連絡とられたい。
 

(巌佐の電子メールは:yiwasscb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp ファクシミリは092-642-2645)



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