ミュラー型擬態について
ミュラー型擬態とは鳥などの捕食者が捕食したときにまずいと思う種(ここではチョウ)同士が 似てくるような擬態の仕方のことです。これとは別にまずい種にうまい種が似てくることをベイツ型擬態といいます。
味のまずいチョウの翅がいろいろな翅の模様を持っているとします。一つの翅の模様が集団中に多くいると、捕食者がその模様を食べ たときに、まわりにその模様が多いので、まずさとその模様を捕食者が関連付けて覚えやすくなります。捕食者は次にその模様を見た ときにその模様を見てまずいと思うのでその模様は捕食されにくくなります。またまれな模様というのは 捕食者がその模様を食べても、その模様を覚えにくく、捕食され続けるでしょう。このようにして翅の模様は最終的に一つの模様だけ で占められてしまいます。これはチョウが2種以上いる場合にも同じことがいえて、1つの翅の模様だけになるでしょう。そこで本研 究では南アメリカにいる亜熱帯性のチョウ、Heliconius eratoHeliconius melpomeneの地理分布に注目しました。 これら2種のチョウはそれぞれ翅の模様に多型が見られ、またその翅の模様の分布がモザイク状に別れています。そして2種間で見る と互いにミュラー型擬態をしているので、似た翅の模様を持っています。また、その翅の模様の分布もほとんど重なっています。そこ でわれわれは、なぜミュラー型擬態をしているならば一つの翅の模様で占められてしまうはずなのに、このように翅の模様の多型が維持されているのかということに疑問を持ち、この翅の模様の境界線の移動スピードを調べるといことを研究しています。
捕食者が赤い模様を食べたときは回りに赤い模様が多いので食べた赤い模様のチョウはまずいと覚えやすい。 ところが同じまずいチョウでも回りに似た模様が少ないと捕食者にまずいと思ってもその模様を捕食者に覚えられにくい。
このようにして、最終的に一つの模様だけになってしまう。
John. R. G. Turner (Ann. Rev. Syst 1981)より引用。左がH. melpomene、右がH. erato同じ番号は似た翅の模様であることを示す。このようにどちらの種も翅の模様に多型が見られ、その地理分布もモザイク状になっており、2種の翅の模様の分布はほとんど一致している。

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