【学部卒業論文】
水溶液中におけるトリエチルスズ (IV) 錯体の平衡
要旨(卒業研究から抜粋)
スズは、p-ブロック元素の金属で炭素と同族の IVB 族に属する、価電子は s2p2 であり、sp3 混成をして通常四配位の化合物を生成し正四面体構造をとる。 IVB 族元素には、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛がある。この中でスズはイオンかエネルギーがもっとも低いのにもかかわらず、相対電子密度はもっとも大きい。スズには Sn(II) とSn(IV) の2種類の酸化状態がある。Sn(IV) の場合、5d 軌道が混成軌道に関与すれば、五配位の三角両錘または正方錘、六配位の八面体といった種々の構造を持つ化合物が生成する。
有機スズは殺虫剤として一般的に使われている。トリアルキルスズ(IV) 化合物もそうであるが、アルキル基によって毒性がかわってくる。例えば本研究で用いるトリエチルスズ(IV) イオンの誘導体は哺乳類に大して毒性がある。トリブチルスズ(IV) 誘導体 (TBT) はその毒性を生かして船の防腐用ペンキに含まれているが、これが海洋中にとけ出して海洋汚染の原因になっている。
本研究では水溶液中におけるトリエチルスズ (IV) 錯体の平衡に関して次の二つの実験をする。まずトリエチルスズ(IV) イオンの加水分解反応について電位差滴定法で確立する。次に、トリエチルスズ (IV) イオンの種々の配位子との錯形成反応を確立する。そして各錯体の安定度定数を求め、水溶液中の構造について考察する。本研究の結果が有機スズによる環境汚染の解決の手がかりになれば幸いである。