九州大学理学研究院ならびに理学府で生物科学を専攻するポスドク・学生の方々による投票により、以下6名の方々が講演者として選ばれました。(講演順に記載)


小林 徹也 博士
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター システムバイオロジー研究チーム 研究員

現在日本学術振興会特別研究員(PD)である新進気鋭の若手研究者。数理分子生物学やシステムバイオロジーの分野で、応用数学を駆使し理論と実験の境界領域に橋をかける研究を行っている。最近は細胞情報処理原理の基礎理論構築とその実験検証やバイオイメージインフォマティクスについて研究を進めている。 2007年には時計細胞の脱同調のメカニズムについての論文がnature cell biology誌に掲載されたほか、これまでに多くの論文に寄与し、国際学会での発表も数多く行っている。



濡木 理 教授
東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生命情報専攻 教授

生命現象を原子分解能レベルで理解するための研究を行なっている。重要な働きをする生体高分子の立体構造をX線結晶構造解析によって決定し、そこから得られる知見を実証するための、in vitroおよびvivoの機能解析等を進めている。非翻訳RNA、膜タンパク質、シグナル伝達と癌などの、未だ謎の多い各分野について研究しており、その成果は一流誌に多数掲載されている。平成19年度には、「高精度な化学反応を触媒する酵素の反応機構の研究」で、文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞。



長谷川 眞理子 教授 *体調不良のため欠席
総合研究大学院大学 葉山高等研究センター 教授

人類学者にして、進化生物学者。ニホンザルやチンパンジーの行動の進化や、クジャクの繁殖戦略などを研究してきた。東大人類学教室で博士号取得後、ケンブリッジ大留学を経て早稲田大政経学部教授になるなど、その研究経歴も大変ユニークな方。現在は、「人間の本性がどのように進化してきたか」という複雑極まる謎の解明のために、殺人や死亡率の性差のデータ解析などを行なっている。自然淘汰の理論を初めて示したダーウィンについての著作も数多くあり、ダーウィンの著作物を翻訳する仕事にも関わっている。



加藤 元海 博士
京都大学 生態学研究センター COE研究員

Wisconsin大学留学、愛媛大学ポスドク等を経て、2007年から現職。湖沼の富栄養化は、水質汚染や酸素濃度の低下による魚介類の死滅、赤潮やアオコの発生などを引き起こし、湖生態系や人の生活に深刻な影響を及ぼす。加藤さんは、湖が突然富栄養化状態に変化する「レジームシフト」を予測する数理モデルを開発した。 平成18年には、「個々の湖生態系で実際の保全管理に直接適用できる生態モデルの構築に優れた業績を挙げた」ことが高く評価され、第10回日本生態学会宮地賞を受賞。



佐々木 裕之 教授
国立遺伝学研究所 人類遺伝研究部門 教授

九州大学大学院医学系研究科出身。哺乳類のゲノムのエピジェネティクスについて研究している。遺伝子発現に深く関与するエピジェネティクスは、ポストゲノム時代の重要なトピックスの一つである。佐々木先生は、遺伝子が父母どちらの由来かを記憶するエピジェネティックな記憶現象、ゲノムインプリンティングの機構と進化の謎について解明を進めている。 最近、哺乳類の生殖細胞とエピジェネティクスに関する総説が、Nature Reviews Genetics誌に掲載されている (Sasaki & Matsui 2008)。



澁木 克栄 教授
新潟大学 基礎神経科学部門 システム脳生理学分野 教授

大脳聴覚野・体性感覚野・視覚野における経験依存的可塑性を主な研究テーマとしている。複雑で広大な脳活動の解明のために、これまでのfMRIやPETなどの手法に変わり、フラビン蛋白蛍光をもちいて脳の活動を可視化する手法の有効性を証明してきた。近年はこの手法を駆使して、これまでの脳科学研究では発見されていない未知の「現象」を発見するための研究を進めている。 2005年には、Neuroscience Research優秀論文賞(日本神経科学会)を受賞。