遺伝(1998)

「鳥類の配偶者選び:よく子の世話をする雄を求めて」

       原田 祐子・巌佐 庸

(要約)

 多くの鳥類では雄がヒナの世話に加わり、重要な役割を果たす.そのとき、雄は、そのヒナが自分の遺伝的子供である確かさ(父性)を推定して世話量を変えることが知られている.

 このような状況で雌が雄からの世話を最大限引きだせるように交尾相手を選ぶとすると、どのような配偶システムがみられるかを、ゲームモデルにもとづいて考察した.

(1)1雌と複数雄のグループでは、子の世話量に応じて雄が支払うコストの増加の仕方により、雌にとって1雄だけと交尾する方が有利な場合と多数の雄を受け入れる方が有利な場合とに分かれる.

(2)交尾に参加できなかった雄が子殺しなどの繁殖妨害をする可能性が高いと、子の世話をするペア雄以外の雄とも少し交尾をして父性を分け与えることが雌にとって有利になる.

(3)雌が複数いると、雌同士が雄の世話をめぐって競争する結果として、一夫一妻になりやすくなる.

(4)雌の交尾受け入れ関係がかなり複雑な網の目状のグラフを描いても、雄の世話の仕方は一夫一妻に近い単純な関係になる傾向がある.


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