アフリカツメガエル末梢血球の発現遺伝子による分類に向けて
The first step to classify peripheral blood cells by expressed genes in Xenopus laevis

波江野 洋
(Department of Biology, Kyushu University, Japan)

05/04/12, 13:30 at Room 3631 (6th floor of building 3 of the Faculty of Sciences)


造血幹細胞から末梢血球にいたる二次造血の造血系譜はヒト(Homo sapiens)やマウス(Mus musculus)といった哺乳類では十分に研究されている。血球は多くの細胞染色法によって鑑別でき、それぞれの染色法によって染めた細胞の像が明らかになっている。また、細胞分化の段階にしたがって特異的に発現する遺伝子がそれぞれの系譜ごとに調べられていて、特に細胞の表面に突き出る膜タンパク質は細胞表面抗原と呼ばれ、細胞表面抗原に対する抗体を用いたFACS(fluorescence activated cell sorter)や免疫組織染色法によって細胞の分離や同定、白血病の診断が行われている。他の脊椎動物では、魚類のゼブラフィッシュ(Danio rerio)で造血システムの解明が急速に進んでおり、従来の細胞染色法や哺乳類で明らかにされている各細胞特異的遺伝子・タンパク質の相同遺伝子・相同タンパク質を利用した細胞の分離や同定が行われてきている。

 私達は両生類のアフリカツメガエル(Xenopus laevis)を主な生体材料に使って、造血システムの解明を目標に研究を行っている。アフリカツメガエルを使う理由として、飼育・採血の容易さ、発生学における豊富な知見、純系の存在、哺乳類にはない環境変化による造血制御の可能性、造血システムの進化学的解釈、といったことが挙げられる。アフリカツメガエルの二次造血について網羅的に血球を分類する仕事は、いくつかの細胞染色法を用いた細胞染色像の観察によってしか行われていない。また、ヒトやマウスで広く使われている抗体はアフリカツメガエルでは未だに数がそろっていない。そこで私達は、in situ ハイブリダイゼーション(ISH)法を主に用い、アフリカツメガエルの末梢血球を特異的な遺伝子の発現によって分類する。使用する遺伝子の候補として、βグロビン・CD3サブユニット・免疫グロブリンMクラスのJ鎖・マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)・インテグリンαⅡbの部分長をクローニングし、βグロビンを用いて実際にISH法を行った。末梢の赤血球では核が存在するものの、血球中にβグロビンのmRNAの存在を確認できなかった。貧血状態にし、より未熟な赤血球をISH法で処理するとβグロビンのmRNAが確認できた。本セミナーで、βグロビンを用いたISH法の結果とアフリカツメガエルにおける血球の分類に向けての展望を述べる。


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