漁業における最適漁獲政策と持続的利用:その理論的研究
竹中 靖人(九大・理・生物)
CENTER>2月3日 (水) 午後2:30 - 4:00
世界の2/3の漁獲物が乱獲もしくは最大限利用されている状態であると言われる。 いま、生物資源に対する人間の利用と資源保護の妥協点を探ることは次世代に繋が る持続的利用を実現する上できわめて重要である。単に理論的な枠組みを作るだけ でなく、それを実際の魚種に応用し、今後の具体的な"獲り方"を提示するような研究 が必要である。この学位論文では、その研究の例として、資源の年齢組成を考えた 持続可能で最適な漁獲政策の理論を提示する。特に、漁獲圧、漁獲開始年齢、漁期 の決定は漁業管理の最重要課題である。
齢構造のある資源の持続可能で最適な漁獲政策は1970年代から研究されてきた。し かし、得られた最適漁獲政策は、ある年齢までいっさい獲らずにその年齢ですべて獲 るなど、実行するには非現実的な政策であった。より明快な経済的、生態学的概念を 用いて、しかもより単純で実行可能な漁獲方針を提案し、それを実際の魚種に適用 し、理論の有効性と問題点を明らかにすることが主題である。最初に漁獲開始年齢、 漁期と漁獲圧を変えた最適漁獲政策を論じる。その結果をマサバ太平洋個体群に適 用したところ、実際よりも漁獲開始年齢を引き上げ、未成魚を保護する政策が支持さ れた。次に、すでに乱獲された資源を回復させながら漁獲していく場合の最適漁獲政 策を論じる。この場合、従来の概念を生態学的に拡張し、資源回復という数値目標に ふさわしい管理政策を提案する。その結果を大西洋クロマグロ個体群に適用したとこ ろ、国際管理委員会が定めた数値目標は不十分であり、資源の持続的回復にはよ り厳しい管理が必要であることが示唆された。

prev next back to program