Taiwan2023
数理生物学研究室 M1の工藤です。
台湾固有マテバシイ種調査のために、四日間の台湾調査へ行って参りました。
はじめに
今回の調査の目的は台湾に固有な1年成マテバシイ。マテバシイ属はブナ科の樹木であり、多くの樹木が受粉したのちすぐに受精するのに対し、この仲間では1年目に受粉したのち冬を越して2年目に受精し結実に至る2年成と呼ばれる珍しい繁殖様式を持つものが多数報告されています。この2年成という形質がどのように進化したのかを探るためには、受粉したその年に受精する1年成の種と比較することが必要になります。しかし、日本に生息するマテバシイ属(Lithocarpus)には2種ありますがいずれも2年成です。そこで、鍵となるのが台湾固有の1年成マテバシイ種でした。現地の研究者に幸い協力いただいて、長期的なモニタリングを開始できれば、1年成マテバシイ種で受粉から受精までの流れを実際に追い2年成マテバシイ種と比較することができます。この共同調査を開始するために、台湾の墾丁国立公園へと向かうことになりました。
墾丁国立公園へ
調査地の墾丁国立公園は台湾の最南端に位置し、台湾北部の桃園空港から台湾南部の中心都市である高雄まで台湾新幹線で移動後、現地の共同研究者らと合流し、レンタカーで墾丁へ向かいました。高雄を出発して墾丁へと南下していくとビル群は見えなくなり、代わりにヤシ林が広がってきました。それに伴って次第に気温が上がり、マンゴーといった南国の花々や美しい海岸線が見え始め、季節が冬であることを忘れさせるほどでした。
1年成マテバシイ種を観察
墾丁国立公園内には大型のシダやヤシ、色とりどりの花々など多様な熱帯らしい植物が繁茂しており、台湾固有の希少種も見ることができます。まず事務所近くの温室内にある台湾固有のマテバシイ種を観察。職員の方の案内で温室へ向かうと様々な南国の植物のなかにマテバシイの属名Lithocarpusと書かれた1 mほどの幼木を発見。まだ小さくサンプリングはできないものの実際に生きた個体を見ることができ、目的に大きく近づきました。
1年成マテバシイ種のモニタリングスタート
台湾3日目のこの日は、1年成マテバシイ種の調査のため、墾丁の市街地から車で調査地へ向かいました。登り始めの比較的標高の低い場所は湿度が高く熱帯らしい植物が鬱蒼と茂っていたのに対し、頂上に近づくと湿度が下がり、風が強くなっていきました。するとそれまで全く見られなかったブナ科の樹木があちらこちらに見え始め、さらに先へ進んでいくと、そこに1年成マテバシイ種の生息を確認しました。早速標本木を決め、自分には初めての調査を行い、以降数年に渡るモニタリングをスタートすることができました。長期データが集まった時、どんな面白い発見ができるのか非常に楽しみです。