膜の変形で読み解く、昆虫の形態多様性を支える力学原理
昆虫の形態はきわめて多様であるが、その形成は上皮とクチクラからなるシート構造の変形に大きく依存する。この変形を支える力学原理を解明するため、私はカブトムシの角形成を題材に研究を進めてきた。カブトムシの角形成では、幼虫から蛹への脱皮時に、あらかじめ折り畳まれた角原基が展開することで形態が形成される。一方、蛹から成虫への変態では、上皮とクチクラの接着および上皮シートの不均一な収縮により、鋭い形態への変形が生じる。これら二つのメカニズムは相補的な形状をつくるため、その組み合わせによって多様な形態が生み出される可能性が示唆された。 現在はさらに、より複雑で多様な形態を示すツノゼミのヘルメット形成を対象として、こうした力学原理の適用可能性を検討している。ツノゼミでは、多様な形態を形状パラメータに基づいて整理するとともに、幼虫期に形成されるミニチュア構造に注目して、その変形過程と力学モデルとの対応づけを進めている。これにより、ツノゼミの複雑な形態のうち、どこまでがカブトムシと共通の原理で説明でき、どこからが新たな原理を必要とするのかを明らかにしたい。最終的には、昆虫の多様な形態をどこまで共通の力学原理で説明できるのかを明らかにしたいと考えている。
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セミナー係 社川 武徳