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インド時間生物学ワークショップ2024

教授の佐竹です。
インド・ミゾラム州で開催されたワークショップ『Mechanisms underlying daily and seasonal biological processes』に参加した。
インド時間生物学会会長Vinod Kumar博士から招待を受け、講師として植物フェノロジーと概日リズムの講義をさせていただいた。

先方がすべてアレンジしてくれるというので、ミゾラム州はどういうところか、どこに泊まるか、私の講義はいつか、参加する学生は何人でバックグラウンドは何か、情報がないまま赴くことになった。加えて、日本からは一緒に行く予定だった講師の方はビザが取得できず(未だに原因が不明)、直前に私一人で行くことになり、正直なところ予測不可能すぎて一人で行くべきか迷った。しかし、そういうときこそ挑戦的な選択肢をとることが、人生をより豊かにするものだ。そして、無事に旅を終えた今、確かにその通りだと実感している。

インド・ミゾラムは、日本人と姿が良く似たインド人が住む、崖に作られた街だった。学生から教えてもらったところ、インドの中で最も幸せな州のようだ。相互扶助の共同体が揺るがずに存在し、僻地であっても焼畑で野菜・米を作り幸せに暮らす人々の姿があった。

街の様子

今年は特に大雨が続いたようである。デリーからミゾラム州都のアイゾール(Aizawl)に降り立ってからは、地すべり、泥、ぬかるみの多い道を1時間半ほど車で行くと、ミゾラム大学に着いた。そこで3日半過ごした。

ワークショップでは、Kumar博士が概日時計の基本的なコンセプトである、自律振動、環境との同調因子(Zeitgeber)、位相応答などについて情熱的な講義をされた後、スイスから来られたBarbara Helm博士が鳥類や哺乳類の生物リズムや季節活動について話をされた。私自身、新しく学ぶことが多くとても新鮮だった。一緒にいくはずだった名古屋大の吉村崇先生はオンラインで参加され、最先端の研究成果も含めた講義をされ、学生からも多くの質問を浴びていた。

会場前に掛けられていた垂れ幕。

Inaugural programでは、学部長も参加され歓待を受けた。ミゾラム州の形をした盾もいただき光栄である。Meet your professorのセッションでは、20人くらいの学生から1時間以上にわたって質問攻めにあったが、とても楽しい時間だった。思いのほか、九大に来たいと思っている学生が多く、Ph.DやPDへの応募について具体的なアドバイスをできたのではないかと思う。今度は皆を日本で歓待できる機会があれば嬉しい。

右からBarbara Helm博士、Vinod Kumer博士、Amit Trivedi博士
学生のみんなと

滞在の最終日には、早朝から学生がバード・ウォッチングに連れて行ってくれた。Tailorbirdを含め5種を見ることができた。鳥だけでなく昆虫から植物まで、現地の学生はとても自然に詳しい。朝イチの講義時間に間に合わなくなるほど熱中して観察をしてしまった。ブナ科シイ属の花が満開で、日本のスダジイと似た匂いが立ち込めていた。種子を食べたら日本のシイと同じ味がした。インドと日本のつながりを感じさせる味である。

ブナ科シイ属の花と堅果

滞在中は、講義の途中で電気が落ちてしまったり、講義時間や日程が変わったり、ちょっとした自動車事故など、ハプニングはつきなかったが、とにかく人々が実に親切でとても良くしていただいた。ミゾラム大学からデリーへ向かうため一人になったときには、すでに恋しく感じたほどである。

刺激的なサイエンスに触れることができただけでなく、文化・人々・自然の多様性を知る機会をいただいたことに、深く感謝したい。

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