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Cold Spring Harbor Laboratory 90th Symposium on Quantitative Biology: AI in Biology

こんにちは。博士2年の工藤です。
5/26から5/30にかけてニューヨーク州ロングアイランドにあるCold Spring Harbor Laboratory (CSHL)で開催されたシンポジウム90th Symposium on Quantitative Biology: AI in BIOLOGYに参加してきました。今回はシンポジウムの様子や、そこで得た経験についてご紹介します。

Cold Spring Harbor Laboratory (CSHL)は1890年に設立された、分子生物学・遺伝学を中心とした生命科学を研究する歴史ある研究所です。ロングアイランド島の中央部に位置し、穏やかな湾を囲む静かな森の中にあります。これまで8名のノーベル賞受賞者が在籍し、生命科学の発展に大きく貢献してきました。実際にノーベル賞受賞者らが住んでいた建物や、実験に使った資料などが展示されており、重要な発見がなされた当時の雰囲気を味合うことができました。

CSHLの入口。ニューヨーク州と聞いて、マンハッタンなど大都会をイメージしていたので、大自然に囲まれた研究所の環境に驚きました。

研究所から眺めるコールドスプリングハーバー湾。

1983年にトランスポゾンの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞したバーバラ・マクリントックが、実際に研究に使用したトウモロコシが展示されていました。教科書で見た大発見の現場に自分がいるのだと考えると、心が躍りました。

今回私が参加したシンポジウムAI in Biologyは、その名の通り、現在急速に発展するAIと生物学の融合領域に関するシンポジウムであり、アメリカを中心に世界中から一流の研究者が集まっていました。扱うトピックは幅広く、ゲノム配列に基づく機能予測やタンパク質構造予測、シングルセル解析、神経科学、進化、創薬に至るまで様々な領域におけるAI活用の最新研究を聞くことができました。

中でも2日目に行われたセッションAI and Regulatory GenomicsとAI and Evolutionは、私自身の研究の興味や手法と共通している部分が多く、とても興味深い内容でした。AI and Regulatory Genomicsのセッションでは、AlphaGenome (DNA配列から遺伝子発現・クロマチン情報・ヒストン修飾など様々な機能を同時に予測する深層学習モデル)の制作者Ziga Avsec氏や、私自身が研究で用いている、深層学習モデルの解釈に基づくDNAモチーフ同定アルゴリズムの開発者Ashukal Kundaje氏など、これまで論文で目にしてきた研究者らの講演を聞くことができ、とても貴重な体験ができたと感じています。特に、講演後のコーヒーブレイクで、直接彼らに対し質問に行くことができたことは、この学会に参加して得た収穫の一つでした。

もう一つのセッションAI and Evolutionでは、Edward Buckler氏による、この学会の基調講演で数少ない植物を対象とした研究について聞きました。Buckler先生は主にトウモロコシを材料に植物の量的遺伝学を進めてこられ、近年では大規模言語モデルなどのAI技術を取り入れた研究もされている方です。講演を聞くことで、植物におけるAI技術の発展状況やそれによって生物学にどのような知見を与えられるのか知ることができ、大変有意義でした。講演後には、ラボの学生さんらと仲良くなることができ、お互いが現在どのようなプロジェクトを進めているのか交流しました。中でもある院生の方は、大変親切にしてくださり、Buckler先生と直接話をする機会を作ってもらったり、学会の中で私が分からないことがあるとすぐに教えてくれたり、さらにはニューヨークに来たら観光するべき名所やお店を一緒に調べたりもしてくれました。とても良い出会いでした。

その他のセッションについても、シングルセル解析との融合や病気の診断、AI駆動による創薬など、どの話題も新鮮で、最先端の知見を多く学ぶことができました。AIエージェントが仮説の策定から必要な実験検証の立案、そして結果の解釈まで一連の研究プロセスを実行できるようになるという話題もあり、今後のサイエンスのあり方が大きく変わっていくであろうことを強く感じました。一方でAIによって様々なことができるようになったことで、それを使ってどんな生物学の問題に取り組むか、どう生物学に知見をもたらせるかが重要になるとも感じました。例えば、AI and Evolutionのセッションでは、酵母からヒトまで幅広い生物種を学習データに使うことで、進化的な制約や法則性を学習し、予測性能を上げる手法の開発など、進化的な視点を取り入れてAIを作ることに焦点が当てられていました。これに対し私は将来的に、単に予測能力を上げるだけではなく、AIを使うことで、生物の進化現象に関する理解そのものを深めることができれば、より面白いのではないかと感じました。

現在行っている機械学習を使ったプロジェクトに関してポスター発表をしました。ほとんどの参加者がヒトやマウスを対象としていたので、樹木の研究をしていると言っただけで「Trees?! Amazing!」と興味を持ってもらえることが多かったです。近い研究をしている人も多かったので、良いフィードバックを得ることができました。

発表以外にも、このシンポジウムでは様々なアクティビティが用意されていました。2日目の昼にはWine & Cheese Partyという時間があり、参加者が中庭に集まって、ワインとチーズを片手に、歓談を楽しんでいました。また4日目にはBeach Picnicという時間が設けられ、研究所内にあるプライベートビーチで夕食をとりました。貴族のような優雅な時間が流れ、非日常感があり面白かったです。知に対するリスペクトのようなものを感じました。

二日目の昼食はBurger Bar。各自パンに具材を挟んでハンバーガーを作ります。アメリカを感じました。

Wine & Cheese Partyの様子。

Beach Picnicの様子。学会で仲良くなった台湾出身で現在アメリカにいる院生の方と、偶然この日にCSHLのポスドク職の面接に来ていたタイ出身の方とご飯を食べました。海外からアメリカに来て研究をすることの楽しさや難しさ、将来どうしたいかなど、話は尽きませんでした。

このシンポジウムの特徴の一つとして、参加者が研究所内に宿泊し、朝昼夜3食を一緒に食べる、合宿形式で行われるという点があります。これにより、参加者同士の交流が自然と促されていました。実際私も食事の時は毎回ランダムにテーブルに座り、毎日違う人と話しました。分子シミュレーションをしている人やデータベースを作っている人、製薬企業で研究している人など、普段だと関わることのない様々な人々と語り合うことができ、良い時間でした。参加者の数がそれほど多くない点もネットワーキングには適していたと思います。

余談として、宿泊に関して若手の参加者は相部屋になるのですが、誰と相部屋になるかは事前に知らされませんでした。誰と一緒になるのだろうとワクワクしながら、初日の夕方部屋に行くと部屋に人はおらず、夜になっても誰も来ませんでした。私はてっきり、相部屋の相手がキャンセルするなどして一人部屋になったのだと思っていたのですが、朝起きると隣のベッドに誰かが寝ていて、とてもびっくりしました。予期せぬ出会いとなった彼ですが、とても親切で社交的なアメリカ人で、良い思い出になりました。

食堂の様子。

最後に、今回のアメリカ滞在は、科学技術振興機構(JST)の若手向け研究費ACT-Xの支援により実現されました。学会自体は5日間と短いものでしたが、第一線で活躍する研究者たちと合宿形式で寝食をともにし、同年代の学生たちと将来について語り合ったり、AIが今後の生物学にどのように変化をもたらすのか考えたり、大変密度の濃い時間を過ごすことができたと感じています。このような機会をいただき、心より感謝するとともに、ここで学んだことを活かし、これまで以上に研究に励んでいきたいと思います。

おまけ
最終日は夜の飛行機まで時間があったので、少しだけニューヨーク観光をしました。ベタですがタイムズスクエアとメトロポリタン美術館に行きました。美術館は想像以上に広く、見ている途中で閉館時間になり、最後まで見られませんでした。またリベンジしたいです。

メトロポリタン美術館。

メトロポリタン美術館のマスコットとなっているカバのウィリアム君。

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