機械学習による転写制御機構のモデリングとダイレクトリプログラミング誘導因子の予測
転写は遺伝情報の発現を規定する中心的な分子機構であり、多階層に渡る転写制御機構を介して細胞の恒常性や機能維持に関与している。その分子機構を解明することは、細胞系譜や胚発生、疾患などの高次生命現象の理解に加え、細胞運命の人為的操作や創薬への応用にも繋がる。近年、次世代シーケンス技術の発展により、転写に関わる大規模かつ多様なマルチオミクスデータが蓄積されるようになった。これに伴い、それらを統合して分子レベルから組織レベルを横断する生命現象を情報科学的に解析する技術が求められている。一方で、転写はシスエレメントや転写因子、クロマチン構造などによって複雑に制御されており、転写制御機構を情報科学的に再現し解明することは依然として挑戦的な課題である。私はこれまでに、iPS細胞を介さずに体細胞を別の細胞種へ直接変換させるダイレクトリプログラミングに焦点を当て、大規模なマルチオミクスデータから細胞運命を変換する誘導因子を予測する情報基盤技術を開発してきた。本講演では、ダイレクトリプログラミング誘導因子の予測研究を題材として、マルチオミクスデータを機械学習で統合したデータ駆動型アプローチによる転写制御機構のモデリングについて紹介し、細胞運命操作への応用可能性について議論する。
MEセミナーとは九州大学数理生物学研究室で1966年から続くインフォーマルセミナーです。基本的には、数理生物学研究室のメンバーが自分の研究についてプレゼンテーションをすることが多いのですが、研究室外から訪問して頂いた研究者の方にお話をして頂くことも多くあります。
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セミナー係 社川 武徳